株式会社ニューズドテック(NewsedTech)

【携帯市場コラム】中古スマホ市場の未来を予測する。

Date 2022/03/22

ニューズドテックでは、有識者によるコラム、業界人を対象とした取材記事を定期的に配信する「ニューズドマガジン」を開始しました。導入を検討している企業・法人向けに、これまでに導入した法人事例、導入事例なども配信します。

【コラム・総論】中古携帯市場

エヌ・ティ・ティ移動通信網株式会社(現NTTドコモ)が「ムーバ」という小型の携帯電話機を市場投入したのが1991年。バブル経済が最終局面を迎えていた日本では、携帯電話事業の自由化に伴い新規参入事業者も含めたシェア争いが激化し、端末の普及が本格的に進み始めていた。

それから30年。いまや、その進化形でもあるスマートフォン(スマホ)に代表されるモバイル端末は通信インフラの要だ。スマホの世帯普及率も8割を超え、買い物からホテルや飲食店、新型コロナワクチン接種の予約、果ては確定申告までもがスマホ上で行えるまでになっている。

モバイル端末の30年は、関連する規制の緩和と整備、技術的な変遷と発展の連続でもあった。動きも早くダイナミックな変化は今も続いている。アナログ式の電波でスタートした携帯通信網は、93年には早くもデジタル化する。以降は通信回線の大容量化、端末の多機能化が進んだ。2000年代に入るとスマートフォンが登場。ちなみにスマホをモバイル端末の王道に押し上げる契機となった米アップルのiPhoneが登場したのは2007年だ。その2年後には、ニューズドテック(当時の社名はアワーズ)が創業。中古のモバイル端末市場が形成されていく。

中古スマホは好調だが

折しも、その中古スマホが好調だ。情報通信関連市場の調査などを手掛けるMM総研(東京都港区)によると、2020年度の販売台数は前年度比13.5%増の185万台と過去最高を記録。今年度(2021年度)はこれを10.3%上回る204万台と、初の200万台突破が予想されている。4年度以降も中古の販売台数は年率7%前後の成長を続け、7年度には268万台に達するとみにれている。

この背景には中古スマホの価格面での優位性がある。要は“新品よりも割安感がある”ということだ。ただ、国内の新品スマホ市場が年間3200万〜3500万台程度で推移していることからすると、中古市場はまだ全体の5〜7%程度と小さい。業界関係者からは、注目されている割には拡大のペースは遅い、という指摘もある。

通信サービスでは、価格面の優位性がより強くシェアに反映している。NTTドコモやKDDIなどの通信4キャリア計6サービスのシェアは昨年度末の時点で約9割、それらのキャリアから回線を借りて格安サービス展開しているMVNO(仮想移動体通信事業者)は約1割となっている上、通信キャリアも格安サービスを展開。それらも含めた格安SIMの合計は2割を超えているとみられている。

では、通信サービスに対して中古端末(中古スマホ)のシェアが伸びていない理由はなんだろうか。ここにはいくつかの複雑な事情がありそうだ。

中古スマホ市場が伸び悩む理由

たとえば、中古携帯市場(中古スマホ)の端末構成。中古携帯端末(中古スマホ)に対するニーズはiPhoneに大きく偏っている。そうした中で、ここ数年にわたってiPhoneの新品販売は伸び悩んできた。つまり、市中にある絶対数が以前に比べると少ないのだ。と同時に、iPhoneは中国など海外でも人気があり、中古携帯端末(中古スマホ)が奪い合いになることから価格を押し上げやすいという面もある。

さらに、中古携帯端末(中古スマホ)ならではの問題もあると考えられている。新品のような故障時の補償が不十分であったり、バッテリーの劣化が進んでいるといった品質面の心配ごとなどだ。

もっとも、その種の劣化や故障はスマホであれは専用のアプリなどで診断することもできる。実際にニューズドテックはそうした診断が可能なアプリを開発、提供をはじめる。そうしたアプリを導入した中古携帯端末(中古スマホ)を購入した場合は、エラーが発信される(故障時)などがあると同様の機種にすぐ交換するといった補償面の充実も進みつつある。

政府も通信費の引き下げには熱心だ。そうした政策目標に沿って、自由化やSIMロックの解除などの施策を打ち出してきた。中古携帯端末(中古スマホ)を含めた端末についても、そうした流れの中で今後の拡大が期待されている。

社会と絡み合う中古スマホ市場

とはいえ、モバイル通信は転換期にもある。新型コロナウイルス禍で通信サービスの利用は大きく拡大したが、モバイル端末の購入やSIMの新規契約は停滞気味である。これは結果論だが、コロナ禍にともなう工場の稼働やサプライチェーンの混乱は端末製造に欠かせない半導体不足などを引き起こしているためだ。たくさん売れたかどうかはわからないが、十分な量が作れなかったということになる。これと同時期に第5世代移動通信システム「5G」の本格展開が始まったことから、将来は「5G」対応の端末仕入れなどがこれまで以上に難航する可能性もある。

折しも、ロシアによるウクライナ侵攻で、原油やその他資源、小麦、海産物などの価格高騰が心配されている。特に原油や資源高騰が長引けば景気面の影響も心配されてくることだろう。コロナ、ウクライナ、そして「5G」をはじめとする通信分野の環境変化。多様な動きがスマホ市場に影響を及ぼしている。

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この記事を書いた人

新品市場と中古市場のバランスに面白みを感じてこれまで15年以上も中古市場に関わるものの、唯一スマホ業界だけが中古の成長に遅れを感じている。ニューズドテックが掲げる使命に魅せられて、スマホ業界、敷いてはデバイス業界を盛り上げたいと思いニューズドテックにジョインした中古スマホ業界を俯瞰的にみる人物の一人。